ソール・ライター展

先日、渋谷のBunkamuraで開催されていた「ソール・ライター展」に行った。

ソール・ライター(1923年12月03日-2013年11月26日)はアメリカの写真家だ。

モノクロ写真が写真としての威厳を保ち、カラー写真がまだプロの写真家達から軽視されていた時代。そんな中、ライターはカラーフィルムによる写真を積極的に撮っていく。

 

ライターの代表的な写真集に『Early Color』というものがある。

直訳すると「早い色」だ。タイトルが示す通り、ライターはその時代、まだカラー写真が確立されていないときから、いち早くカラーフィルムでシャッターを切った。

「カラーなんて本物の写真じゃないよ」と気取った保守的写真家達から遠巻きに思われながらもライターはカラー写真を撮り続けた。

 

『Early Color』に収められている写真は1940年代から50年代に撮影されたものだという。そして、この写真集が出版されたのは2006年である。ライター、このとき83歳である。

おおよそ半世紀の月日を経て、ようやく日の出を見ることになった写真は何の変哲も無い日常でありながらも、まるで映画のワンシーンのようにどれもドラマチックな印象を孕んでいる。

きっと写真の良し悪しがわからない人(わたしも含め)が見ても"うわっ……かっこいい……"と思うことだろう。

くどいようだが、『Early Color』とは「早い色」という意味だ。

しかし、言葉の裏側に「早すぎたカラー写真」という意味が含んでいるのではないかと思う。

そして、いま時代がようやくライターの写真に追いついてきたのだと。

 

そもそも、なぜライターはカラー写真を撮り続けたのか。

元々は売れない画家だったライター。水彩絵の絵の具を用いた色彩豊かな絵画を描き続けた。画家にとって色は表現する上で重要な要素。そこで身につけた色彩感覚が写真家としてのライターの作品に大きな影響を与えたに違いない。

 

ライターは自分を売り込んだり、自分の作品を語るのが大嫌いな人物だったという。

(ライターを追ったドキュメンタリー映画があるので、そこで何を語っているのかとても興味深い)

このような部分はとても好感が持てる。

 

最後にライターが残した言葉の中で、特に印象が残っている言葉を引用する。

 

「私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。神秘的なことは馴染み深い場所で起きていると思っている。なにも、世界の裏側までいく必要はないんだ」