【ゼクシイのCM】結婚しなくても確かに幸せな時代だけど……という話
70億人が暮らすこの星で結ばれる
珍しいことではなくても奇跡だと思った
結婚しなくても幸せになれるこの時代にわたしは
あなたと結婚したいのです
この言葉は2017年のゼクシイのCMで用いられているコピーである。
はじめてこちらのCMを見たとき、「ハッ」とした。
“なんて素晴らしいCMなんだ”と。
映像はイギリスのロックバンドThe ZombiesのThis Will Be Our Yearの曲と共に 幸せそうな花婿と花嫁がたくさんの風船に捕まりながら、都会の空を飛んでいくというシンプルなもの。
わりと普通な印象の映像だがそこにコピーの力が発揮され、爆発的にCMとしての質を高めている。
さらに、セリフを読む起伏のない女性の声がコピーの印象力を増幅させている。
ネットの書き込みなどを読む限り、こちらのCMは高評価のようで、
ラジオでもパーソナリティが話していたくらい話題にもなっている。
ではなぜ、今回のゼクシイのCMが、いまの時代の人の胸に刺さっているのか。
1、2年前ぐらい前から「パリピ」という言葉をよく耳にする。
この言葉はいまの時代を象徴している。キラキラとしたゴージャスな生活を求め、それを実行している人たち。そんなパリピたちは「イエーイ!楽しい!」とワッキャワッキャする。
「楽しい」というは本心なのだろうけど、どこかに「楽しい自分を演じなきゃ」という自己暗示が含まれている気がする。
現代、その自己暗示のせいで心のそこから思える楽しさや、幸せが埋没している。
これは、みんなが感じている楽しいという感情は真実ではないが嘘でもないということを意味している。いまのままでも十分に楽しいのだ。
“結婚しなくても幸せになれるこの時代”という言葉はまさにその状態を言い当ており、冷静に納得させられる。
コピーは中盤までこうした気持ちや時代を肯定するでもなく、否定もしていない。ただ俯瞰して、ありのままの状態を述べている。
コピーを聞いている人はその言葉に一旦は共感する。
でも、最後の最後で「……とまあ、御託はいいや。好きです!結婚しよう!」
と圧倒的感情論をぶち撒けられる。
冷静ぶって共感していたのに、急に心めがけて熱い感情の言葉がガツーンがやってくる。
フローチャートで表すとこんな感じ。
頭での共感→心での驚愕→心での共感
このコピーの構造がパリピや頭でわかっている気になっている現代の人たちに響き、話題となったのではないだろうか。